MizushitaTaru's blog

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novel>メルヴィル 『ビリー・バッド』

光文社古典新訳文庫『ビリー・バッド』メルヴィル飯野友幸

を読んだので感想など。

例によって萌えーとか言ってます、注意。
あとボーイズラブ妄想っぽいです、ご注意。


メルヴィルといえば海の話ですねー。って言っても代表作の『白鯨』、上巻で挫折した思い出があるんですが(笑)(読みたいなと思いつつずるずる来てる。反省……)

この『ビリー・バッド』も商船から強制徴兵された新人水兵の話です。
主人公は題名と同じ名前。誰にでも好かれる純朴で若々しい紅顔の美少年です。
彼がとある事件を引き起こしてしまって、その事件の顛末なんかが主題でしょうか。


ちょっと調べてみたところ、『ビリー・バッド』は遺稿なんですね。研究者の方がまとめられて発行されたということで。もしかしたら読めなかったかもしれないと思うと研究者すげーなと思います。小説ひとつにもドラマがあるんだなーというか。
昔この小説を読みたいなーと思ってた時期に翻訳が手に入らなかった記憶があるので、今回文庫で読めて嬉しかったですね。本屋で見かけた時うおおお!と叫んでしまいましたよwなんで読みたいと思ったのかはさっぱり覚えてませんが。



海の話書きたいなぁ、と、初めのうちはぼけーっと読んでました。
蟹工船読んだ時も思ったなぁ。汗臭くってベタベタして不快感のある感じ、密室で逃げたくても逃げられなくて、強制的に同じ顔を見てなきゃいけない、みたいな。
来る日も来る日も同じ作業をやらされてるというのもいいな。


**

でもね!!!あのですね!!!!作中の「クラガート」っていう人物がね!
すげえ好みでね!!思わず萌えてクラガートの人物描写だけ何度も読んじゃいました。
ビリーはその見た目の美しさと内側からの無垢さから皆に愛されるんですが、クラガートはそれをあまり快く思ってない人物ですね。でもこう言う風に書いちゃうとすごくストレートな嫌な奴っぽい(小物で嫌がらせとかしちゃいそうな感じ)ですが、そんなことはまったくないです。むしろもっと狂ってるというかむしろ愛しちゃってるんじゃないかな?みたいな。
すごいかわいいんですよ。お前読み方間違ってるよと言われるかもしれないですけどwいいんだ!!そう読めちゃったんだから!!ww

まずクラガートの描写でたまらんのが

・見た目がいい。自分も見た目がいいことを自覚している。意識してこざっぱりした格好とかしちゃう。
・自分が嫌われ者だと知っている。(嫌われる役職らしい。ここらへんは調べてないのでよくわからないです)
・自分が頭がいいことを知っている。
・ビリーの無垢さ、内側から溢れ出る純真な輝きが本当に嫌い。自分はどうやってもそうなれない、という嫉妬かもしれない。が認めたくない。

ここらへんでしょうか。
このクラガートの人物描写がすごく好きで、もうクラガートに寄り添ってわかるわかる、と言いたくなるような感じなんですよ。人間味に溢れてるひとだな、とすごく。クラガートみたいな人物が書きたい……!

あとは、頭がいいゆえに、みっともない嫉妬心を外側に出さないで、ビリーにわけ隔てなく快活に挨拶しちゃう(ビリーはクラガートのことをむしろいい人だな~とか思っちゃうくらい)とかがかわいいです。
メルヴィルは彼のことを狂っている人間だって書くんですけど。突然わけわからないことを叫びだすわけじゃなくて、正気であるときと何ら変わりないように狂っている(※うろ覚え)っていうね、そういう静かな狂人だって書くのがかっこいい。頭がいいからこその悪、みたいなもの。
ビリーには自我というものがおよそなくて、ただ生きている、という感じなのですが。クラガートは自分のことをものすごく考えてる。すごく対比的に書かれているなと思うんですよね。こういうね、正反対に二人の男の対比を書かれるのに私は弱いっす……。

クラガートを描写しているシーンで好きな文章を引用してみます

おのれのうちの生来の悪を消す力はなかったが、それを隠すことはたやすかった。善を理解することはできたが、そうなるには無力であった。

ここらへん私が上で力説してたビリーにはなれないって思ってたんじゃないかな?というところですね

運命に禁じられなければビリーを愛することさえできたかのように

これ原文読みたいなー!!ものすごく!!



好きなシーンは、刑執行のシーン、艦長室のシーンと。
あとは、
ビリーのことが気になりすぎて、ビリーが仕事したり、同じ配属の奴らと話しているのをクラガートがストーカーっぽく見つめてるシーンが好き(笑)
クラガートが萌えキャラに見える(笑)
上に引用した「運命に~」はここらへんに出てきます。


***

船のシーンだとか、反乱の話だとか、善悪だとか、自我についてだとか、二人のひととなりが書かれた文章が一片きりだったとか、好きな描写や考えたいテーマはたくさんあるんですが、今回はクラガートについて語ってみました。

まあ、こんな読み方もあるんだよということで。

あと、クラガートの描写で『サムエル記上』のダビデとサウルの関係よりも~みたいな文章があったので、気になるので次はサウルとダビデを調べようと思います。笑